最近、SNSやニュースで大きな話題になっている「Midjourneyとディズニーの訴訟」について、皆さんも耳にしているかもしれませんね。私たちクリエイターにとって、著作権の問題は常に頭の片隅にあるテーマです。
今回の訴訟は、AIが私たちクリエイターの仕事や、クリエイティブの未来にどう影響していくのか、その行方を占う上で非常に重要な出来事だと私は考えています。今日は、この注目の訴訟について、デザイナーの視点から、分かりやすく、そして私なりの考察を交えながら深掘りしていきたいと思います。
一体何が？ディズニーがMidjourneyを提訴した背景
さて、まずは今回の訴訟がどういうものなのか、ざっくりとご説明します。
今回、世界に名だたるエンターテインメント企業であるディズニー（そして、ユニバーサル・ピクチャーズも！）が、画像生成AIのパイオニア的存在であるMidjourney社を、大規模な著作権侵害で訴訟を提起したんです。これは、ハリウッドの主要企業が生成AI企業に対して起こした、初の本格的な訴訟だと言われています。
個人的には、「ついに来たか」という印象です。AIの進化が止まらない中で、いつかこんな日が来るだろうな、と漠然と思っていた方も少なくないのではないでしょうか。
訴訟に至るまでの経緯（と私の想像）
これまでの報道を見る限り、大手スタジオ側は、訴訟に踏み切る前にMidjourneyに対して、著作権侵害の停止や、キャラクター生成を防止するような技術的な対策（たとえば、特定のキャラクターの学習データをフィルタリングするとか、生成をブロックするとか…）を求めていたようです。しかし、そこからの具体的な対応がMidjourney側からなかった、ということなのでしょう。
「対話での解決が難しい」と判断したからこその、今回の提訴だと思います。法廷での真っ向勝負になりそうです。
訴訟の主な争点：著作権侵害の核心
今回の訴訟で、ディズニー側が特に問題視しているのは、以下の点です。
- 無断での著作物利用と学習:
MidjourneyのAIが、ディズニーやユニバーサルが長年かけて築き上げてきた、膨大な量の著作物（映画、アニメ、キャラクターデザインなど）を、権利者の許可なく学習データとして取り込んでいる、という主張です。私たちデザイナーも、作品を作る上で参考にするものはありますが、それを「学習」という形でAIが勝手に利用している、と捉えられているわけですね。 - 既存キャラクターの生成と配布:
これが一番分かりやすい点かもしれません。Midjourneyのサービスを使うと、ユーザーは「スター・ウォーズ」のダース・ベイダーやヨーダ、「アナと雪の女王」のエルサ、「怪盗グルーのミニオンズ」や「シュレック」など、誰もが知っているキャラクターに「そっくり」な画像を生成できてしまうんです。しかも、それを共有したり、場合によっては商用利用しようとするユーザーもいる、と。訴状では、これらの行為がオリジナル作品の著作権を侵害していると強く指摘されています。 - 「著作権のタダ乗り」と「盗作の底なし穴」:
訴状の中には、Midjourneyの行為を「著作権のタダ乗り」であり、「盗作の底なし穴」だと、かなり強い言葉で非難している部分もあるようです。これには、企業が長年かけて築き上げてきたブランドやキャラクターへの、強い危機感と憤りを感じます。 - 「自動販売機による複製行為」:
さらに強烈な表現として、Midjourneyのサービスを「著作権で保護されたキャラクターを再現し、それによって収益を得る仮想の自動販売機」とまで表現しています。これは、ユーザーが特定のプロンプトを入力するだけで、著作権侵害となるキャラクター画像を「簡単」に生成できてしまう現状への、痛烈な批判だと受け止めています。Midjourneyが、直接的に著作権を侵害しているだけでなく、ユーザーが侵害画像を生成・共有するのを「手助けしている」という間接的な著作権侵害も主張している点がポイントですね。
私たちクリエイターも、既存の作品からインスピレーションを受けることは多々あります。しかし、その線引きは非常に曖昧で、かつ重要です。AIがその線引きを軽々と超えてしまっている、というのが今回の訴訟の根本にある問題だと感じています。
注目ポイント 📜
著作権侵害の定義、AIにどう適用される？裁判の行方はAIの未来に大きな影響を与えそうです。
実は他にもある！AIと著作権を巡る主要な訴訟
今回のディズニーとMidjourneyの訴訟は特に注目されていますが、実はAIと著作権を巡る訴訟はこれだけではないんです。世界中で、クリエイターや企業がAI企業に対して、同様の問題意識から訴訟を起こしています。
その中でも特に知られているのが、アーティストのサラ・アンダーセン氏らによる集団訴訟です。
これは、漫画家、イラストレーター、写真家といった複数のアーティストが、Stable Diffusion、Midjourney、そして画像共有サイトのDeviantArtを運営するStability AIに対して起こした集団訴訟です。彼らの主張も、AIが著作物を無断で学習データとして利用していること、そしてAIが生成する画像が、オリジナル作品のスタイルや特徴を模倣している、あるいは直接的に複製している、という点にあります。
この訴訟では、いくつかの重要な動きがありました。例えば、一部の請求については、著作権侵害の主張が曖昧であるとして却下されたり、原告側に対してより具体的な侵害の証拠を求めるよう指示が出されたりしています。つまり、「AIが単にスタイルを学習する」という行為が、直ちに著作権侵害に当たるのかどうか、という点がまだ明確ではないんです。
また、画像だけでなく、音楽や文章といった分野でも同様の訴訟が起きています。例えば、ニューヨーク・タイムズがOpenAIとMicrosoftを著作権侵害で訴えたり、音楽業界でもAIによる楽曲生成を巡る議論が活発になったりしていますよね。
これらの訴訟は、それぞれ異なる具体的な争点を持っているものの、根底にあるのは「誰が、どのようなデータを、どのように利用してAIを開発・運用する権利を持つのか？」「AIが生成したコンテンツの著作権は誰に帰属し、誰が責任を負うのか？」という、非常に複雑で新しい問いかけです。
法廷での判断が、今後のAI技術の発展、そして著作権のあり方を大きく左右することは間違いありません。
注目ポイント 📜
世界中でAIと著作権の議論が過熱中！様々な分野の訴訟が、私たちの未来のルールを形作っていくでしょう。
なぜ今、大手スタジオがAI企業を訴えるのか？
「なんで今まで黙ってたの？」と思う方もいるかもしれませんね。これには、いくつか理由があると思います。
- AI技術の急激な進化と普及:
ここ数年で、画像生成AIの性能は驚くほど向上し、一般ユーザーにも広く普及しました。Midjourneyのようなツールが、誰でも手軽に高品質な画像を生成できるようになったことで、著作権侵害のリスクが現実的かつ大規模になった、ということでしょう。 - ビジネスモデルへの影響:
ディズニーのようなキャラクタービジネスを展開する企業にとって、自社のキャラクターがAIによって無秩序に生成・利用されることは、ブランド価値の希釈化や、将来的な収益源への大きな脅威となります。例えば、ファンアートは許容できても、AIが勝手に生成した「非公式グッズ」のようなものが市場に出回ったら、企業としては見過ごせないですよね。 - 業界全体の危機感:
ハリウッドでは、脚本家組合や俳優組合がAIによる仕事の代替や報酬問題についてストライキを行ったことも記憶に新しいですよね。今回の訴訟は、エンターテインメント業界全体がAIに対して抱いている、権利保護への強い意識の表れだと感じています。
この訴訟は、単に「ディズニーが怒っている」という話ではなく、AI時代の著作権保護のあり方を、法的に、そして社会的に明確にしていこうとする動きなんだと思います。
注目ポイント 📜
キャラクタービジネスの根幹に関わる問題！大手企業の強い危機感が背景にあることを見逃せません。
私たちクリエイターへの影響はどうなる？
今回の訴訟の行方は、私たちクリエイターにも大きな影響を与える可能性があります。
- AIツールの利用制限？:
もしMidjourney側が敗訴した場合、AIの学習データに対する規制や、生成されるコンテンツに対する厳格なフィルタリングが義務付けられるかもしれません。そうなると、私たちが普段使っている画像生成AIツールが、今よりもっと制限されたり、特定のキャラクターを生成しにくくなったりする可能性も出てきます。これは、AIを効率化ツールとして活用している私たちにとっては、少し困る状況になるかもしれません。 - 著作権に対する意識の向上:
一方で、この訴訟は私たちクリエイター自身の著作権に対する意識を、改めて高めるきっかけになるはずです。AIが生成した画像を安易に商用利用したり、既存のキャラクターに酷似したものを創作したりすることのリスクを、より強く認識するようになるでしょう。 - 「人間ならでは」の価値の再確認:
AIがどれだけ進歩しても、人間の手から生まれるオリジナルな作品、そしてその作品に込められた「魂」は、決してAIには真似できません。今回の訴訟を通して、より一層、「人間ならではの創造性」の価値が再評価されると私は信じています。AIは効率化のパートナーであって、決してクリエイティビティのすべてを代替するものではない、ということが明確になるでしょう。
注目ポイント 📜
AIツール利用の「当たり前」が変わる可能性も。しかし、人間の創造性は唯一無二だと再認識する機会になるでしょう。
今後の動向に注目！
今回のディズニーVS Midjourney訴訟、そしてサラ・アンダーセン氏らの集団訴訟など、AIと著作権を巡る法廷闘争は、まさに歴史的な転換点にあります。今後の動向について、いくつか多角的に考察してみたいと思います。
- 「フェアユース」原則の適用拡大か、厳格化か？
AI開発企業側は、「フェアユース（公正利用）」原則を主張する可能性が高いでしょう。これは、著作権のある作品を、批判、解説、報道、教育、研究などの目的で、著作権者の許可なく利用することを認めるアメリカの著作権法の考え方です。AIの学習プロセスが、このフェアユースに当たるのかどうかが大きな争点となります。
もしAIの学習がフェアユースとして広く認められれば、AI開発はさらに加速するかもしれません。しかし、著作権者が作品の使用料を得る機会を著しく奪うと判断されれば、フェアユースの範囲が限定され、AIの学習データ収集に大きな制約がかかる可能性も考えられます。 - 法整備の動き
現行の著作権法は、AIによる創作や学習を想定して作られたものではありません。そのため、各国でAI時代に合わせた法整備の動きが活発になることが予想されます。例えば、AIが生成したコンテンツの著作権帰属をどうするか、学習データ利用に関する透明性をどう確保するか、といった点が議論の対象となるでしょう。
この訴訟の結果が、今後の法整備の方向性に大きな影響を与える可能性も十分にあります。 - AI技術の進化と対応
訴訟の進展と並行して、AI技術自体も進化を続けるでしょう。例えば、著作権をクリアしたデータセットのみで学習したAIや、特定コンテンツの模倣を回避するフィルタリング技術がより高度になるかもしれません。AI企業も、法的リスクを回避しつつ、サービスを提供し続けるために、様々な技術的・倫理的な対応を迫られることになります。 - クリエイターコミュニティの変化
今回の訴訟は、私たちクリエイターがAIとどう向き合うべきか、改めて考えるきっかけを与えてくれます。AIを積極的に活用するクリエイターと、著作権侵害のリスクを警戒して距離を置くクリエイターの間で、意見の相違がより明確になる可能性もあります。しかし、最終的には、AIを「ツール」として賢く利用し、自分たちの創造性を最大限に引き出す方向へと進んでいくのではないでしょうか。著作権フリーの素材を活用したり、AIとの協業における新しい契約形態が生まれたりするかもしれません。 - 「人間の手による創作」の価値の再定義
AIがどれだけ高度な作品を生成できるようになっても、人間が持つユニークな視点、感情、そしてストーリーテリングの能力は、依然として価値を持ち続けるでしょう。むしろ、AIが多くの定型的な作業を代替することで、人間ならではの「本質的な創造活動」に、より多くの時間とエネルギーを注ぐことができるようになる、というポジティブな側面も考えられます。
この訴訟の判決は、AIの学習データに対する規制、AIが生成するコンテンツの著作権、そしてAI企業のビジネスモデルに大きな影響を与えることになります。ひいては、私たちクリエイターがAIをどう活用していくべきか、その方向性を示す重要な判例となるでしょう。
私はこの訴訟の行方を注意深く見守り、新しい動きがあれば、また共有していきたいと思っています。クリエイターが、AIを「脅威」ではなく「最高のパートナー」として迎え入れられる未来のために、一緒に考え、学び続けていきましょう。
参考ソース：
- ディズニーとユニバーサル、AI画像めぐりMidjourneyを提訴–「盗作の底なし穴」と非難
- ［2025］AI規制をめぐる議論の現在地 | 一般社団法人 MPN
- AIと著作権に関する諸外国調査 報告書 2024 年 3 月 | 文化庁
- 画像生成AI「Stable Diffusion」や「Midjourney」に自作品の著作権を侵害されたとするアーティストたちの集団訴訟が裁判所によって棄却される
- NYタイムズvsオープンAIの著作権侵害訴訟、弁護士はこう見る
- ディズニーらが画像生成AI｢Midjourney｣を著作権侵害で訴えた理由 | ギズモード・ジャパン
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