【月刊クリエイターズレポート】Microsoft時価総額4兆ドル、Metaは10兆円投資へ。AI・デザイン業界の巨大資本がクリエイターの未来を変える(2025年7月)

【2025年7月クリエイターズレポート】Microsoft時価総額4兆ドル、Meta10兆円投資など、AIとデザイン業界の地殻変動を完全解説。

約17700文字 / 読了目安:約45分

2025年7月は、クリエイターを取り巻く環境において、記憶すべき重要な出来事が国内外で相次いだ1ヶ月でした。AI開発に対する国家レベルでの戦略が示され、巨大IT企業は天文学的な規模の投資計画を発表。それに応えるように、私たちが日常的に使う制作ツールは大きな進化を遂げ、クリエイターの働き方や権利に関する議論も、これまで以上に活発化しました。

このレポートでは、7月に起きたこれらの主要なニュースを分野横断で取り上げ、それぞれの出来事が持つ具体的な意味と、私たちデザイナーやイラストレーターの仕事にどのような影響を与えるのかを、事実を基に分析・解説します。

【要約】この記事のポイント💡
2025年7月は、国と企業がAI開発に巨額の資金と国家戦略を投入し、その影響がクリエイターの現場にまで及び始めた月でした。アメリカの「AI行動計画」と巨大IT企業の天文学的な投資は、ツールの進化を加速させる一方、私たちを取り巻くルールを変える可能性があります。現場ではAdobeとCLIP STUDIO PAINTがAI活用と手描き体験の深化で異なる道を示し、ワコムは「描くため」の専用機を投入。働き方では、個人の実績で仕事を選ぶ新しい動きや、AI時代の作品の「信頼性」を証明する技術が登場。クリエイターの権利をめぐる議論も活発化し、私たちの働き方と創造性の両面で、大きな変化の兆しが見られました。

この記事で分かること📖
🇺🇸 世界の潮流: アメリカのAI国家戦略と、巨大IT企業の総力戦が意味するもの
⚖️ 権利と倫理: ポケモン社の事例から学ぶ、AI時代に自分の権利を守るための知識
🎨 ツールの未来: PhotoshopとCLIP STUDIO PAINT、それぞれの進化の方向性と私たちが選ぶべき道
💼 働き方の変化: 「会社」ではなく「創るモノ」で仕事を選ぶ、新しいキャリアの作り方

目次

国家と企業の総力戦:AIの地殻変動とクリエイターへの影響

まず最初に、すべてのクリエイティブ活動の背景にある、最も大きな潮流から見ていきましょう。7月は、AIをめぐる競争が、もはや企業間のレースではなく、国家と巨大資本がしのぎを削る「総力戦」の様相を呈した月でした。

アメリカの国家戦略「AI行動計画」

2025年7月23日に米国政府が発表した「AI行動計画」に関する海外メディアの速報。AI開発の規制緩和とインフラ投資を加速させる国家戦略を示すスクリーンショット。
2025年7月、米国政府は90項目以上の政策提言を含む「AI行動計画」を発表。AI開発を国家レベルで加速させるこの動きは、クリエイターが使うツールやサービスの国際的なルールにも影響を与えます。(画像引用元: Ballard Spahr)

7月、アメリカ政府は「Winning the Race: America’s AI Action Plan(競争に勝つ:米国のAI行動計画)」という広範な国家戦略を発表しました。(Consumer Finance Monitorの記事)これは「国として、本気でAI開発のトップを獲りに行くぞ!」という力強い宣言です。その核心は、AI開発のアクセルを全力で踏み込むことにあります。AI開発の妨げと見なされる規制を緩和し、データセンターなどの基盤設備の建設をスピードアップさせる。そして、同盟国にはアメリカ製のAI技術を積極的に輸出し、世界での主導権を握ろうというものです。

企業の天文学的な投資と戦略

AIブームを背景にMicrosoftが時価総額4兆ドルを達成したことを報じる英ガーディアン紙のスクリーンショット。AI市場の巨大な経済規模を示す画像。
2025年7月31日、Microsoftの時価総額が4兆ドルに到達。この巨大な価値はAIブームによって支えられており、今後のツール開発に投じられる資金が、かつてない規模になっていることを示しています。(画像引用元: The Guardian)

この政府の動きと呼応するように、民間企業もケタ違いの投資と、私たちの活動に直接関わる戦略を次々と発表しました。

  • Microsoftは、AI事業の好調を背景に、時価総額4兆ドルという驚異的な領域に到達。同社のクラウド事業「Azure」がAI開発の巨大な基盤となっており、その成長が全体の評価を押し上げています。(The Guardian Technology section記事
  • Meta(旧Facebook)は、2025年のAI基盤設備に最大720億ドル(約10兆円超)を投じる計画を発表。同時に、これまで自社プラットフォーム内に閉じていたInstagramやFacebookの公開投稿を、Googleなどの検索エンジンが検索結果に表示できるようにするという、歴史的な方針転換を行いました。これは私たちクリエイターにとって、自身の作品がより多くの人の目に触れる巨大なチャンスが生まれたことを意味します。(zamin記事
  • OpenAIは年間収益が120億ドルに倍増したと報じられ、再生可能エネルギーを求めてノルウェーに10万基のGPUを設置する巨大データセンター計画「Stargate Norway」を打ち出しました。(HPCWire記事
  • Anthropicは、なんと1,700億ドルという評価額での資金調達を目指していると報じられ、AI開発の熾烈な人材獲得競争が表面化しました。(PYMNTS記事
  • Amazonの動きは特に示唆に富んでいます。AIモデルの学習データとして、ニューヨーク・タイムズの高品質な記事コンテンツを年間2,000万ドル以上でライセンス契約する一方で、自社のECサイトが他のAIショッピングサービスに情報を収集されないよう、ブロックする仕組みを積極的に導入していることが明らかになりました。これは、AI時代において「データ」が、買うべき資産であると同時に、守るべき砦でもあるという、企業の複雑な戦略を物語っています。(MediaPost記事

これらの数字は、私達からすれば現実離れしていますが、この巨大な資本が、私たちが使うツールの進化を支えているのです。政府がルールを作り、企業が巨額を投じて開発競争を繰り広げる。この大きなうねりが、AIの進化を加速させ、良くも悪くも、私たちの創作環境を根本から変えていくことになります。

注目ポイント📌
🏛️ AI開発は、国家戦略と巨大企業の投資が絡み合う「総力戦」のステージに入りました。
🌐 Instagramなどの投稿がGoogle検索に表示されるように。自分の作品を見つけてもらう絶好の機会です。
📦 Amazonの動きは、AI時代における「データ」の価値と、それをめぐる攻防が激化していることを示しています。
⚡️ AIのエネルギー消費問題(OpenAIのノルウェー計画)や、国ごとのルールの違いなど、私たちクリエイターが向き合うべき新たな課題も生まれています。

倫理と権利の新戦線:AI時代の「正しさ」をめぐる戦い

国レベルでAI開発のアクセルが踏まれる一方で、その急激な進化は、私たちクリエイターの権利や倫理観に大きな問いを投げかけています。7月は、人間とAI、双方によって引き起こされた「これは誰の作品なのか?」という問いが、業界全体に突きつけられた1ヶ月でした。

ポケモン社の事例が示した「コミュニティの目」の力

2025年7月に問題となった「ポケモン TCG ポケット」のイラスト盗用疑惑に関する海外メディアの報道。ファンアートが公式アートの参考資料として不適切に使用された著作権問題のスクリーンショット。
7月下旬、大きな議論を呼んだ「ポケモン TCG ポケット」の盗用疑惑。この一件は、企業がファンアートを扱う際の著作権と倫理の問題点を浮き彫りにしました。(画像引用元: sportsrant)

7月下旬、世界中に衝撃が走ったニュース。それは、株式会社ポケモンがリリースを控える新作ゲーム「Pokémon TCG Pocket」の公式イラストに、ファンアートの盗用疑惑が浮上した一件です。(Sports Rant記事

報道によると、制作チームが外部のイラストレーターに対し、イラストレーターのSie Nanahara氏のファンアートを「参考資料」として提供し、結果として酷似した作品が制作されてしまったとされています。この疑惑はSNSで瞬く間に拡散し、多くのファンやクリエイターから批判の声が上がりました。その結果、同社は声明を発表し、該当アートを取り下げるという異例の対応を取りました。

この事件は、私たちに2つの重要な教訓を示しています。

  1. 「参考」と「盗用」の境界線は、私たちが思うよりずっと曖昧で危険だということ
    特に、厳しい納期やプレッシャーに追われる企業内の制作現場では、この境界線がいかに簡単に踏み越えられてしまうか。この一件は、世界中のアートディレクターや制作チームに対し、参考資料の扱いに関する内部のルール作りの重要性を再認識させる、強烈な警鐘となりました。
  2. 法的に問題がなくても、倫理的に受け入れられなければ意味がないということ
    ポケモンの利用規約には、ファンアートを公式が利用できると解釈できる条項がある、という指摘もありました。しかし、たとえ法的に許される範囲だとしても、コミュニティが「それはクリエイターへの敬意を欠いている」と判断すれば、企業のブランドイメージは計り知れないダメージを受けます。クリエイターやファンの集合的な声が、巨大企業の行動すら変える力を持つ。 これは、私たちにとって心強い事実です。

「信頼」を証明する技術と、プラットフォームの責任

FireShot Capture 295 DNPとGMOペパボ コンテンツの信頼性を証明するクレデンシャル技術を活用してアート作品の二次創作を促進する実証実験を開始 ニュー www.dnp .co .jp

AIによる画像生成が当たり前になった今、「この画像は本当に人間が描いたものか?」「元にした作品を無断で使っていないか?」という疑念は、常につきまといます。この根源的な問題に対し、具体的な解決策を模索する動きも始まっています。

コンテンツクレデンシャル技術:大日本印刷(DNP)と、クリエイター向けサービス「SUZURI」を運営するGMOペパボが、共同で実証実験を開始した技術です。これは、デジタル画像に「いつ、誰が、どんなツールで作成・編集したか」という情報を、改ざんできない形で埋め込む「デジタル履歴書」のようなもの。(大日本印刷株式会社の公式発表

これが普及すれば、ある作品がAI生成物か、人間の手によるオリジナルか、あるいは正当な手続きを経た二次創作なのかを、誰もが確認できるようになります。これは、コンテンツの価値が、その「信頼性」によって決まる新しい経済圏のはじまりを予感させます。

こうした大きな問題と並行して、プラットフォーム側が倫理的な責任を果たそうとする具体的な動きも見られました。Meta社がInstagramで10代の利用者を保護するための新機能を導入(ケータイWatch記事)したことは、その一例です。

AI時代におけるクリエイターの差別化戦略を示す、KADOKAWAの「ワードレス漫画」コンテストのニュース画像。セリフに頼らない物語構築能力という、AIには模倣が難しい人間ならではのスキルに光を当てる。
AIによる画像生成が一般化する中、KADOKAWAが「ワードレス漫画」コンテストを開催。これは、AIには真似しにくい、絵だけで物語を伝える「人間ならではのスキル」の価値が、今後ますます高まることを示唆しています。(画像引用元: FNNプライムオンライン)

一方で、AIには模倣が難しい、人間特有のスキルセットの価値が、逆に見直される動きも出ています。大手出版社のKADOKAWAが開催した「ワードレス漫画コンテスト」は、その象徴です。セリフに頼らず、絵の連続性だけで物語を構築する力。コマとコマの間でキャラクターの感情の機微を表現する力。こうした、現在のAI技術では容易に模倣できない、複雑な物語の構築能力こそが、これからのイラストレーターや漫画家の強力な武器になるでしょう。

そして、こうした権利の問題を考える上で忘れてはならないのが、7月22日の「著作権の日」です。1899年に日本で最初の著作権法が公布されたこの記念日は、AI時代の今、歴史を振り返るだけでなく、自らの権利とは何か、そしてクリエイターとしてどうそれを守り、主張していくべきかを改めて考える、重要な一日となったはずです。

注意事項📌
✍️ 他者の作品を「参考」にする際は、常に細心の注意を払いましょう。インスピレーションを得ることは大切ですが、安易な模倣はあなたのクリエイター生命を脅かすリスクを伴います。
🤝 ファンアートを制作する際は、公式が発表している二次創作のルールを必ず確認し、敬意の精神を忘れないようにしましょう。
💡 コンテンツクレデンシャル技術の動向に注目です。自分の作品の「出自」を証明できることが、将来的に大きな強みになる可能性があります。
📖 一枚絵の美しさだけでなく、連続性のあるストーリーや、複雑な感情を描き出すスキルを磨くことが、AIとの明確な差別化に繋がります。

デジタルキャンバスの再定義:ツールの進化に制作哲学が表れる

こうした権利や倫理をめぐる大きな変化の渦中で、私たちの創作活動の核となるデジタルツールは、どのような進化を遂げているのでしょうか。7月の終わり、Adobeとセルシスが奇しくも同日に発表した大型アップデートは、この時代の課題に対するそれぞれの「答え」を示すかのようで、実に対照的でした。これは、私たちが「テクノロジーとどう付き合うか」を問われているように感じます。

Adobeの戦略:AIをワークフローに溶かし、制作を「加速」させる

2025年7月29日に発表されたAdobe PhotoshopのAI機能強化に関するニュース。新機能「調和」や生成AIによるアップスケール、削除ツールの改善により、クリエイターの作業時間を大幅に短縮する。
AdobeがPhotoshopとIllustratorの大型アップデートを発表。特に注目は、貼り付けたオブジェクトをAIが自動で馴染ませる「調和」機能。これまで時間のかかっていた合成作業が、劇的に速くなります。(画像引用元: Impress Watch)

まず、クリエイティブ業界の最大手、Adobeの動きです。同社はPhotoshopやIllustrator、PDFといったソフトウェアで長年業界標準を築き、私たちの仕事に欠かせない存在です。そのAdobeが7月29日に発表したアップデートは、AIを制作プロセスの一部として完全に定着させようという、強い意志を感じさせるものでした。(Impress Watch記事

  • 「調和」機能(ベータ版): 写真に別のオブジェクトを貼り付けた際、色や光の当たり方をAIが自動で解析し、背景に自然に合成する機能です。これまでレタッチの専門家が時間をかけて行っていた高度な調整作業を、AIが一瞬で肩代わりします。
  • 「生成アップスケール」(ベータ版): 解像度の低い画像を、AIがディテールやシャープさを復元しながら高品質化するツール。クライアントから提供された小さな画像や、過去に制作したWeb用の作品など、これまで再利用が難しかった素材を活用できる道が拓けます。
  • 進化した「削除ツール」と「モデルピッカー」: 不要なオブジェクトを消す精度がさらに向上しただけでなく、「生成塗りつぶし」などで使うAIモデルを、旧来のFirefly 1と最新のImage 3から選択できる「生成AIモデルピッカー」も搭載。これにより、アーティストが求める作風に応じた、より精密な調整が可能になります。

Adobeの戦略は非常に明確です。AIにゼロから何かを「創造」させるのではなく、人間が行うクリエイティブ作業の中で、特に時間がかかる部分や専門知識が必要な部分をAIに補助させることで、制作プロセス全体を高速化しようとしています。

CLIP STUDIO PAINTの哲学:「描く」体験そのものを「深化」させる

全世界5000万人が使うCLIP STUDIO PAINTの2025年7月アップデート。AI機能ではなく、レイヤー操作の改善や作業時間記録といった、クリエイターの手作業と制作体験そのものを深化させる機能を追加。
CLIP STUDIO PAINTが7月末にアップデートを公開。注目すべきは、AI機能ではなく「描く」という行為そのものを快適にするための改善に注力している点です。クリエイターの体験を第一に考えるという、同社の哲学が表れています。(画像引用元: Celsys, Inc.)

Adobeと同日にアップデートを発表したのが、株式会社セルシスです。同社は「CLIP STUDIO PAINT(通称:クリスタ)」を開発・提供する日本の企業で、特に漫画・イラスト制作ソフトの分野では世界中のクリエイターから絶大な支持を得ています。そのクリスタ(Ver.4.1)のアップデート内容は、Adobeとは全く異なる方向性です。(CELSYS公式サイト

  • 制作を助ける機能の強化: 複数のレイヤーをまとめて削除したり、3D素材をグループ化して管理しやすくしたり。AI機能ではなく、アーティスト自身の「手による作業」を直接的に効率化するための、地道ながらも堅実な改善が数多く盛り込まれました。
  • モチベーション維持機能: 特筆すべきは、日々の作業時間を自動で記録し、グラフで可視化してくれる新機能です。ゲームのように自分の頑張りを客観的に振り返ることができ、創作活動のペース管理に役立ちます。

AdobeがAIによる「出力の増強」に大きく舵を切る一方で、セルシスはアーティスト自身のスキルと創作体験そのものに焦点を当てています。この思想は、LINEヤフーが全社員約11,000人に対し、調査や資料作成といった定型業務での生成AI利用を義務化した動きと対比すると、より鮮明になります。LINEヤフーは「単純作業はAIに任せ、人間はより創造的な業務に集中する」という効率化を、会社全体の方針として進めています。これはAdobeのAI戦略と親和性が高い考え方です。

セルシスは、AIによる自動化とは別の道、つまり「描くという行為そのものの価値と喜びを、技術で深化させる」という選択肢を私たちに提示しているのです。

Webとツールの多様化する環境

私たちの選択肢は、この二大ソフトに限りません。

AI機能のUI/UXデザインに特化した、海外の権威あるメディア「Smashing Magazine」の記事。クリエイターがAI搭載ツールをデザインする際に役立つ、具体的なデザインパターンを紹介している。
AIツールが当たり前になる中、その「使いやすさ」をどうデザインするかが新たな課題です。Smashing Magazineのような専門メディアでも議論が活発化しており、AIのUI/UXはデザイナーにとって必須の知識となりつつあります。(画像引用元: Smashing Magazine)
  • Webデザインの進化: 海外のデザイン情報サイト「Smashing Magazine」では、AIがユーザー体験をどう向上させるかという議論が活発化し、GoodFirmsのような調査会社もAI活用を次世代Webデザインの必須要素として強調しています。同時に、Droipのような高機能な、プログラミング知識なしでWebサイトを構築できるツールも登場し、AIと組み合わせることで、誰もが高度なWebサイトを制作できる環境が整いつつあります。
  • 多様な専門ツール: 無料で高機能なオープンソースのペイントツールKrita、手軽に3Dアバターが作れるVRoid Studio、2Dイラストに命を吹き込むLive2Dなど、特定のニーズに応える多様なツールが存在し、クリエイティブな環境全体の豊かさを支えています。

注目ポイント📌
🤔 あなたはAdobeの「AIによる効率化」と、CLIP STUDIO PAINTの「手描き体験の深化」のどちらに未来を感じますか?これは、あなた自身の制作スタイルを見つめ直す良い機会です。
🤖 AdobeのAIは、面倒な作業を自動化し、クリエイターがより本質的な判断に集中できるよう手助けしてくれる「賢いアシスタント」です。
🖌️ CLIP STUDIO PAINTは、描くことそのものの喜びと効率を追求し続ける、信頼できる「最高の画材」です。
🏢 LINEヤフーのようにAI活用を必須とする企業もあれば、UnileverのようにAIでデザイン部門を強化する企業もある。社会全体のAIとの向き合い方が、私たちの仕事に影響を与えます。

ハードウェアの選択が未来を決める:ワコムが投じた「描画専用機」という一手

ソフトウェアが制作の「魂」だとしたら、それを動かすハードウェアは「身体」です。7月は、私たちの手を動かす「器」であるハードウェア市場にも、大きな動きがありました。長年、液晶ペンタブレット市場でプロの信頼を勝ち得てきた日本のトップメーカー、ワコム。そのワコムが、AppleのiPadが大きなシェアを占めるポータブルデバイス市場に、極めて戦略的な新製品を投入したのです。

「描くためだけ」に最適化された、Wacom MovinkPad 11

Wacom MovinkPad 11公式サイトトップページのキャッチコピーと製品コンセプト
ワコムが掲げる「描きたい気持ちだけあればいい」という MovinkPad 11 の核心的なコンセプト。(出典:ワコム公式サイト)

7月31日に発売された「Wacom MovinkPad 11」は、単なる新しいタブレットではありません。「ポータブルクリエイティブパッド」という、新しいカテゴリーを市場に提案しようとするワコムの意欲作です。

  • 意欲的な価格設定: プロ仕様のペン「Wacom Pro Pen 3」(筆圧8192レベル!)が標準で付属して、69,080円(税込)。iPad AirとApple Pencilを別途購入する合計金額と比べると、非常に導入しやすい価格設定です。
  • 「描く」ことへの徹底的なこだわり
    • ディスプレイは高解像度なだけでなく、光の反射を抑えるアンチグレア(AG)加工と、指紋の付着を防ぐコーティングが最初から施されています。多くのiPadユーザーが追加で購入する保護フィルムが、標準で装備されているのです。
    • OSにはAndroid 14を搭載。これは、動画視聴やWebブラウジングといった多機能なメディア消費デバイスではなく、あくまで「お絵描きアプリを快適に動かすための土台」であるという、製品の明確な割り切りを感じさせます。
  • 強力なソフトウェア・アプリのセット提供:なんと、世界中のプロが愛用する「CLIP STUDIO PAINT DEBUT」の2年間ライセンスが無料で付属します。さらにワコム独自のスケッチアプリ「Wacom Canvas」や作品管理アプリ「Wacom Shelf」もプリインストール。箱から出してすぐに、制作から管理まで行える環境が整っています。

この製品仕様を見れば、ワコムの狙いは一目瞭然です。これはiPadとは異なる土俵で勝負を挑む戦略と言えるでしょう。

iPadは素晴らしいデバイスですが、本質的には誰もが使うための「汎用機」です。クリエイターが本気で「描く」道具として使うには、高価なペンを別途購入し、光沢画面の滑りやすさや反射をフィルムで補い、有料アプリをインストールする必要がありました。
MovinkPad 11は、そうしたクリエイターが抱える小さな不満や追加コスト」を一つひとつ丁寧に取り除き、「これ一台で、最高の描画体験を」という一点突破を目指しています。

これは、特に学生や、これからプロのイラストレーターを目指す人々にとって、非常に魅力的な選択肢となるでしょう。ワコムは、汎用タブレット市場でAppleと正面から競うのではなく、「アート制作専用機」という新たな市場を確立し、そこで再び確固たる地位を築こうとしているのです。

Procreateの「不在」とハードウェア選択の重要性

iPad用イラストアプリ「Procreate」の次期バージョン5.4に関する、開発チームからのロードマップアップデートのスクリーンショット。ブラシ機能の刷新など、コアツールのメジャーアップデートが計画されている。
iPadでのお絵描きの定番アプリ「Procreate」の、次期メジャーアップデートに関する開発チームからの進捗報告です。未来の進化に期待が高まります。

一方で、iPadクリエイターの多くが依存する人気アプリ「Procreate」は、7月になっても待望の大型アップデート(5.4)をリリースできませんでした。当初の予定から何度も延期されており、コミュニティからは不安や焦りの声も聞こえてきます。

このアップデートの遅れは、逆説的にProcreateがiPadのクリエイティブ環境においていかに絶大な影響力を持つかを示しています。しかし同時に、ワコムのような競合が攻め込む隙を与えていることも事実です。

ソフトウェアとハードウェアは、車の両輪のような関係です。どちらか一方だけでは快適に前に進めません。今回のワコムの挑戦が市場に受け入れられるかは、Android OSという土台の上で、CLIP STUDIO PAINTをはじめとするクリエイティブアプリが、今後どれだけ快適な体験を提供し続けられるかにかかっています。私たちクリエイターは、より慎重に、自分の制作スタイルや予算に合った「快適に利用できる組み合わせ」を見極める戦略的な視点が必要になりそうです。

注目ポイント📌
🎯 描画に特化した「専用機」か、多機能な「汎用機」か。Wacom MovinkPad 11の登場により、ポータブルデバイス選びの基準が大きく変わります。
💰 初期投資を抑え、すぐにプロ仕様の環境を手に入れたいなら、MovinkPadは非常に有力な候補です。
🍎 iPadとProcreateの組み合わせが強力であることは揺るぎませんが、ワコムの挑戦が市場全体を活性化させることは間違いありません。
⚙️ 自分がメインで使うソフトは何か、どんな場所で描きたいか。ハードウェアの選択は、あなたの創作活動の根幹を支える重要な意思決定です。

AIは創造のパートナーへ:科学と研究のブレークスルーが示す未来

ここまで、AIをめぐる国家や企業の競争、そして現場のツールへの影響を見てきました。しかし、AIの進化は、競争や効率化のためだけに存在するわけではありません。7月には、AIが人類の知のフロンティアを押し広げ、複雑な課題解決に貢献する、希望に満ちたニュースも発表されました。

科学的発見を加速するAI

AIが科学分野で大きな成果を上げた事例。ニュージャージー工科大学(NJIT)の研究で、AIが次世代バッテリーのための全く新しい5つの素材を発見し、社会的な課題解決に貢献している。
私たちがAIのイラストや文章に注目している間にも、科学の世界ではAIが大きな貢献をしています。これは、AIが次世代バッテリーの新素材を発見したというニュース。AIは社会を支える技術でもあるのです。(画像引用元: NJIT)
  • 新素材の発見: ニュージャージー工科大学の研究者たちが、AIを用いて、次世代バッテリーの候補となる5つの全く新しい材料を発見したと発表しました。これまで何年もかかっていた材料発見のプロセスを、AIが劇的に短縮したのです。(New Jersey Institute of Technology公式
  • 地球の健康診断: Google DeepMindは、膨大な衛星データを統合・分析するAIモデル「AlphaEarth Foundations」を発表。雲を透視して地表を見たり、肉眼では見えない環境の変化を捉えたりすることができ、気候変動などの研究を加速させると期待されています。(The Times of India記事

これらのニュースは、AIが私たちの指示を待つだけでなく、人間だけでは到達し得なかった未知の領域を発見し、創造的な探求を手助けしてくれるパートナーになり得ることを示しています。AIが発見した未知のパターンや構造が、未来のデザイナーにとって、新しいテクスチャや配色のインスピレーションの源泉になる。そんな未来も、決して遠い話ではないでしょう。

日本の現場で進む着実なAI活用

AIが専門分野に特化していく流れを示す、日本IBMの「病院業務支援AIソリューション」。生成AIが医療現場の文書作成を自動化し、医師の負担を軽減するなど、具体的な業務効率化を実現する。
AIの進化は、汎用的なお絵描きAIだけではありません。これは、日本IBMが発表した医療現場向けの専門AI。医師の文書作成を助けるなど、特定の業務を効率化する動きが加速しています。(画像引用元: クラウド Watch)

海外の大きなニュースだけでなく、私たちの足元、日本の専門分野でも、AIは着実に価値を生み出し始めています。

  • 医療現場を支えるAI: 日本IBMは、病院の事務作業を自動化する「病院業務支援AIソリューション」を発表。医師が作成する退院サマリーの草稿をAIが作ることで、多忙な医療従事者の負担を軽減します。(クラウド Watch記事
  • 工場の「目」となるAI: コニカミノルタは、非常に少ない学習データから、工場ライン上の新しい部品などをAIに検出させる「フューショット物体検出」という技術を発表。これは、多品種少量生産が求められる現代の製造業において、非常に重要な技術です。(薬事日報記事

これらの動きは、AIが「なんでもできる魔法の箱」から、「特定の課題を解決する専門家」へと進化していることを示しています。デザインの世界でも、漠然とした指示に応えるAIだけでなく、より専門的で具体的なタスクを正確にこなす、頼れる相棒のようなツールが、今後ますます重要になっていくはずです。

ワンポイントアドバイス📌
🤝 AIは競争の道具であると同時に、科学の発展や社会課題の解決に貢献する強力なパートナーでもあります。
🏥 異業種でのAI活用事例に、未来のクリエイティブツールのヒントが隠されています。
🎨 AIが可視化した科学データや未知のパターンが、新しいデザインの着想源になるかもしれません。

クリエイターエコノミーの成熟:個の力が「ブランド」になる時代

イラストレーターがIP(知的財産)となる「コラボ経済」を象徴する、コンビニNewDaysと韓国のイラストレーター「チェゴシム」のキャンペーン。個人のクリエイターが持つブランド力が、大手企業のマス市場向けキャンペーンを牽引している。
これぞ「イラストレーターがブランドになる」時代の象徴です。大手コンビニNewDaysが、既存の有名IPではなく、韓国の人気イラストレーター「チェゴシム」さんを単独で起用。個のクリエイターの力が、マス市場を動かしています。(画像引用元: JR-Cross)

最高のツールを手に入れ、AIとの付き合い方を考えたら、次はその力を使って社会とどう関わっていくか。私たちの「稼ぎ方」や「活動の仕方」も、今、大きな変革期を迎えています。2025年7月は、クリエイターエコノミー、つまり個人が主体となる経済圏が新たなステージに進んだことを示す、象徴的な出来事が数多くありました。

イラストレーターが主役になる「コラボ経済」

もはや、イラストレーターは単に依頼された絵を描く「作業者」ではありません。その人自身の作風や世界観が、人々を惹きつける「ブランド」となり、ビジネスの中心的な役割を担う。そんな時代が本格的に到来しています。この背景には、Z世代の約7割が何らかの「推し活」を実践しているという調査結果にも見られるように、特定のキャラクターやクリエイターへの強い熱量が、大きな消費行動に繋がっているという社会の変化があります。

  • NewDays × チェゴシム:大手コンビニチェーンのNewDaysが、韓国の人気イラストレーター「チェゴシム」さんを起用した大規模キャンペーンを展開しました。これは、既存の有名なアニメや漫画のキャラクターではなく、イラストレーター個人の持つ魅力と発信力が、多くの消費者を動かす力があることを証明した、記念碑的な事例です。(JR-Cross公式
  • 人気作品 × 個性派イラストレーター:「ローゼンメイデン」がイラストレーターの「ようか」さんと、「しゅごキャラ!」が「夢ノ内」さんと、それぞれ作品の世界観にマッチしたクリエイターとタッグを組み、期間限定のポップアップストアを開催。往年の名作の世界観を、現代的な感性でアップデートし、新しいファン層に届ける素晴らしい試みです。(コラボカフェ編集部記事
  • ホロライブ × LAドジャース:日本発のVTuber事務所ホロライブが、アメリカのメジャーリーグ球団とコラボイベントを大成功させました。所属タレントとドジャースがコラボした限定グッズは大きな話題を呼び、彼女らの持つ影響力が国境やジャンルを軽々と越え、巨大な経済圏を生み出している現実を私たちに見せてくれました。描きおろしイラストが採用されており、ファンにはたまらないグッズとなっていたようです。(Cover Corporation公式ニュース

これらの動きは、私たちクリエイターに大きな可能性を示しています。自分の作風を磨き、SNSなどで地道に発信を続けることで、イラストレーター自身がライセンス可能な知的財産(IP)となり、依頼された仕事以外の多様な収益の道を切り拓けるのです。

「会える」価値の再発見と、専門化するクリエイター支援

クリエイターの働き方の価値観の変化を象徴する、プロダクト起点で仕事を探せる求人サイト「Granty」の登場。どの会社で働くかより、「何を、誰と作るか」を重視する現代のデザイナーのキャリア観を反映。
「どの会社で働くか」より「何を作るか」で仕事を選ぶ。Grantyの登場は、私たちクリエイターの働き方の価値観が、大きく変化していることを示す象徴的な出来事です。(画像引用元: CreatorZine)

リモートワークが普及した今だからこそ、リアルな場で直接顔を合わせることの価値が再認識されています。「クリエイターEXPO」や「デザインフェスタ」、「HandMade In Japan Fes」、そして個展「キューライス万博」や、企業がファンと直接繋がる体験型イベント「じゃがりこ文化祭」のような大規模イベントが完全復活し、多くのクリエイターとファン、そして企業担当者が直接交流することで、新たなビジネスチャンスが生まれています。

一方で、クリエイターを支えるサービスや基盤も、より専門的に、より深く進化しています。

  • プロダクト起点で仕事を探す「Granty」: このサービスは、株式会社Grantyが運営する新しい形の求人サイトです。「どの会社で働くか」という従来の価値観ではなく、「何を、どんなチームと作るか」で仕事を探せるのが最大の特徴。自分が本当に情熱を注げるプロジェクトに、スキルや価値観でマッチングしたいと考える現代のデザイナーや開発者にとって、画期的なプラットフォームです。(CreatorZine記事
  • 大規模サイト向けフォント「Webフォント Pro」: 日本を代表するフォントメーカーである株式会社モリサワが発表したこの新プランは、Webフォントを単なる「装飾」から、企業の持つ個性やビジネスを支える「重要なデジタル基盤」へと格上げするものです。(モリサワ公式のニュース
  • 専門特化型の支援サービス: アニメ制作を効率化するウェブサービス「Animon Studio」(PR TIMES記事)、文章の炎上リスクをAIがチェックしてくれるnoteの「AI執筆サポート レビュープラス」、低価格でLP制作を依頼できるRyuki Designの定額プラン(アットプレス記事)、ファンからの贈り物を安全に受け取れる「Gipt」など、クリエイターの特定の悩みをピンポイントで解決する、専門性の高いサービスが次々と登場しています。
  • 新しい才能の発掘: 岡山県が主催する学生向けのデザインコンテストや、CreatorZineが特集した「文化・技術・表現の最前線──2025年に注目すべき、20人のグローバルグラフィックデザイナーたち」のような企画は、新しい才能が発掘され、業界で注目を集めるための重要な機会となっています。

これらの動きは、クリエイターエコノミーが、Patreonのような汎用的な支援プラットフォームの時代から、個々のクリエイターが自分の目的に合わせて専門的なツールを組み合わせて活用する時代へと移行していることを示しています。自分の活動にはどんなツールが必要か、リアルとオンラインでの活動をどう組み合わせるべきか。クリエイターにも、自身の活動を客観的に分析し、戦略を立てる視点が求められているのです。

注目ポイント📌
🌟 あなた自身がIP(知的財産)です。作風を磨き、発信を続けることで、個人の名前で大きな仕事が舞い込む可能性があります。
🙌 オンラインでの繋がりも大切ですが、リアルなイベントに足を運ぶことでしか得られない貴重な出会いやチャンスがあります。
🛠️ 制作、マーケティング、収益化など、自分の活動に必要な専門ツールを組み合わせて、独自の「道具箱」を構築する視点が重要です。
🏢 「会社の知名度」よりも「何を創るか」。クリエイターの仕事選びにおける価値観も、確実に変化しています。

分野を越境せよ!建築・ブランディングに学ぶ、未来の創作ヒント

100年の伝統と革新が融合したプロダクトデザインの好例、ライカ100周年記念モデル「ライカD-LUX8」。初代「ライカI」への敬意を込めたフォルムや素材選びが特徴。
100年の歴史を持つライカが発表した記念モデル。クラシックな外装やニッケルカラーのアクセントは、100年前に誕生した初代モデルへの深い敬意を表しています。まさに伝統と革新が共存するデザインです。(画像引用元: ライカオンラインストア)

最後に、少し視点を広げてみましょう。優れた創作のヒントは、しばしば自分の専門分野の外に転がっているものです。7月に発表された建築やプロダクトデザイン、ブランディングの世界で起きた出来事は、私たちイラストレーターやデザイナーにとっても、インスピレーションの宝庫です。

伝統と革新が共鳴するデザインの力

  • ライカ100周年記念モデル: ドイツの老舗カメラメーカー、ライカが発表した記念モデルは、世界的に有名なブランドの象徴である赤いロゴを、あえて取り除いていました。これは、ロゴに頼らなくても製品そのもののフォルムや質感がブランドの価値を物語る、という絶対的な自信の表れです。「引き算の美学」が、いかに強い価値を生むかを示してくれます。同月には、世界的な写真賞「ライカ・オスカー・バルナックアワード」のファイナリストが決定するなど、写真文化そのものを牽引する姿勢も示されました。(Leica公式ストア
  • キヤノンの工業デザイン賞受賞: 一般の目に触れることのない半導体製造装置が、国内で最も権威あるデザイン賞の一つを受賞しました。これは、機能性が最優先される専門的な領域であっても、優れたデザインが操作性、安全性、そして企業の信頼性を高める、決定的な差別化要因になることを証明しています。(PR TIMES記事
  • イームズ美術館の再生計画: 20世紀デザインの巨匠、イームズ夫妻の功績を伝える美術館を、現代建築界のスターであるヘルツォーク&ド・ムーロンが改修するという、夢のようなプロジェクトです。全く新しい建物を建てるのではなく、歴史ある建物を現代の技術で「再利用」するという選択そのものが、イームズのデザイン哲学を未来に継承する、というメッセージになっています。(SFist記事)(Dezeen記事
  • 産学連携から生まれる新しい価値: ディノスと長岡造形大学の共同プロジェクトから初の商品が生まれるなど、学生の柔軟な発想と企業のノウハウが結びつくことで、新しい価値が生まれる事例も見られました。(PR TIMES記事

空間と体験がブランドを物語る

クリエイターにとって絶好のインスピレーション源となる、森アーツセンターギャラリーで開催中の「トーベとムーミン展」。作者トーベ・ヤンソンの独特な世界観と、時代を超えて愛されるキャラクターデザインを学べる。
優れた作品に触れることは、最高のインプットです。7月から始まった「トーベとムーミン展」は、私たちデザイナーやイラストレーターにとって、創造性を刺激される貴重な機会となるでしょう。(画像引用元: 「トーベとムーミン展」公式サイト)
  • サントリーの広告電通賞: サントリーホールディングスが、国内で最も権威ある広告賞の総合賞を2年連続で受賞しました。その勝因は、テレビCMでも、屋外ポスターでも通用する、普遍的で強力な「中心となるアイデア」にありました。メディアの形式が多様化する現代において、小手先の表現テクニックではなく、ブランドの根幹となるアイデアの強度がすべてを決める、ということを教えてくれます。(電通株式会社の公式プレスリリース
  • 北川一成氏の「ヒロシマ・アピールズ」: 日本グラフィックデザイン協会(JAGDA)が発表した2025年版の平和ポスターは、グラフィックデザイナー北川一成氏によるもの。白い背景に「PEACE」の一語が描かれたシンプルなデザインですが、裏面は鏡文字になっており、「空」間を意識させるという深い概念が込められています。これは、グラフィックデザインが単なる情報伝達だけでなく、鑑賞者に深い思索を促す「問い」そのものになり得ることを示しています。(美術手帖公式
  • ザハ・ハディドと妹島和世の建築: 香港に完成したスポーツ施設や、瀬戸内海の犬島に公開された新しいパビリオン。どちらも、単なる「建物」ではありません。周囲の風景と一体化し、人々が集い、交流する「体験」そのものをデザインしています。建築が、コミュニティや地域の物語を伝える、強力なメディアとして機能しているのです。(Dezeen記事)(Tokyo Art Beat記事
  • 多様な展示とブランディング: その他にも、森アーツセンターギャラリーでの「トーベとムーミン展」やギンザ・グラフィック・ギャラリーでの「2025 JAGDA 亀倉雄策賞・新人賞展」名古屋造形大学の学生企画による企画展/遠い空のアレッポや、D&DEPARTMENTの「LONG LIFE DESIGN」のように長く愛されるデザインの価値を問い直すイベント、Range Roverの新しいロゴマーク発表のような、そのブランドらしさを刷新する動きなど、私たちの創造性を刺激する出来事が数多く見られました。

これらの事例から私たちが学べるのは、表面的なスタイルだけでなく、その背後にあるコンセプトや哲学の重要性です。なぜこの色なのか、なぜこの形なのか。自分の作品に、一本筋の通った「物語」を宿らせること。それが、分野を越えて人の心を動かす、本物の創作活動に繋がるのではないでしょうか。

ワンポイントアドバイス📌
🏛️ 機会があれば、美術館や建築展に足を運んでみましょう。異分野のトップクリエイターの思考に触れることが、あなたの表現の幅を広げてくれます。
💡 優れたプロダクトデザインに注目してみましょう。なぜこの製品は使いやすいのか、美しいのかを観察することで、UIデザインや情報設計のヒントが得られます。
🗣️ 自分の作品の「コンセプト」を言葉にしてみる習慣をつけましょう。強いコンセプトは、メディアの垣根を越えて、作品に普遍的な力を与えてくれます。

まとめ:変化の先で、私たちは何を目指すのか

2025年7月の動向は、私たちクリエイターを取り巻く環境が、複数の重要な点で変化していることを示しています。

  • 国家と企業の動向: AI開発は国と企業が主導する大きな流れとなり、その影響はツールの機能や国際的なルール形成にまで及んでいます。
  • ツールの進化と分岐: AIによる「効率化」を推進する流れと、手仕事による「深化」を支援する流れが明確になりました。クリエイターは、自身の制作スタイルに基づいて、ツールをより戦略的に選ぶ必要があります。
  • ハードウェアの多様化: 「描画専用機」という新しい選択肢は、特にこれからプロを目指すクリエイターにとって、制作環境のあり方を見直すきっかけとなるでしょう。
  • 働き方の成熟: クリエイター自身が「IP(知的財産)」となり、多様なサービスを組み合わせてビジネスを構築する動きが本格化しています。
  • 倫理と信頼性の重要性: コミュニティの声が企業を動かす力を持つようになり、作品の「信頼性」や「人間ならではのスキル」が、これまで以上に重要な価値を持つようになっています。

これらの事実から言えるのは、クリエイターが自身の活動を続けていく上で、ただ作品を作るだけでなく、新しい技術の可能性とリスク、権利に関する知識、そしてビジネスに関する視点を持つことが、ますます重要になっているということです。

このレポートで解説した情報が、皆さんが日々の変化に対応し、ご自身の活動方針を考える上での、一つの具体的な判断材料となれば幸いです。

来月のレポートで、またお会いしましょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

この記事の制作プロセスについて
CreateBitの記事は、「AIをクリエイティブな時間を確保するためのパートナー」として活用し、すべて筆者の最終的な責任のもとで編集・公開しています。CreateBitのAI活用とコンテンツ制作に関するより詳しい基本方針は、こちらのページでご覧いただけます。


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📚 参考ソース

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この記事を書いた人

元デザイン会社のディレクターです。クリエイティブ現場で役立つ効率化のコツ、便利なサービス、海外デザイン素材を紹介。AI時代のクリエイターの新しい働き方を深く掘り下げていきます。

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