イラスト制作のスピードを劇的に引き上げる「ワイヤレス左手デバイス」の中でも、特にクリエイターから注目を集めている2機種「CLIP STUDIO TABMATE 2」と「8BitDo Micro Bluetooth ゲームパッド」を徹底比較します。
「キーボードのショートカットで十分では?」と思う人も多いかもしれません。しかし、実際には手元を見ずにツールを切り替えられる快適さを知ってしまうと、元には戻れなくなります。
今回は、デスクに固定する据え置き型ではなく、「手に握ったまま、自由な姿勢で作業できるワイヤレスデバイス」のこの2機種を解説します。それぞれの強みと、どんな人にフィットするのかを深掘りしていきます。
🎨 クリスタ特化・直感操作 → CLIP STUDIO TABMATE 2
💰 圧倒的コスパ・複数ソフト併用 → 8BitDo Micro
⚙️ 決定的な違い → ブラシサイズを調整しやすい「ホイール」の有無
💡 接続の手軽さ → TABMATE 2はアプリ直結、8BitDoはキーボード認識
この記事で分かること📖
🚀 専用機と汎用機:2つのデバイスの立ち位置とスペックの違い
🤔 操作感のリアル:ダイヤル有無が作業テンポや腕への負担にどう影響するか
🔧 iPad環境の注意点:OS接続の罠と、ファームウェア更新の実態
💸 運用コストの比較:約8,000円の差額に見合う価値と選び方
クリスタ特化のTABMATE 2と、汎用型の8BitDo Micro

まずは、この2つのデバイスがどういったコンセプトで作られているのか、明確にしておきます。
CLIP STUDIO TABMATE 2(以下、TABMATE 2)は、株式会社セルシスが開発した「クリスタ(CLIP STUDIO PAINT)専用の入力デバイス」です。通信規格にBluetooth Low Energy(BLE) 5.1を採用したことで、旧モデルの弱点だったiPadやiPhoneにも完全対応しました。クリスタを動かすためだけに設計されているため、ソフトとの連携は非常にスムーズです。
一方の8BitDo Micro Bluetooth ゲームパッド(以下、8BitDo Micro)は、本来はゲームを遊ぶための「超小型ゲームコントローラー」です。本体のスイッチを「キーボードモード(Kモード)」に切り替えることで、各ボタンにショートカットキーを自由に割り当てられるため、クリエイターの間で「コスパに優れた小型左手デバイス」として定番化しています。
| 比較項目 | CLIP STUDIO TABMATE 2 | 8BitDo Micro | ||
|---|---|---|---|---|
| ターゲット | クリスタをメインで使うイラストレーター | 複数ソフトを使い分ける人、予算を抑えたい人 | ||
| 接続方式 | Bluetooth Low Energy 5.1 | Bluetooth、有線(USB-C) | ||
| 重さ | 約75g(単3電池含む) | 24.8g | ||
| 入力方式 | ボタン + ホイール | ボタンのみ(十字キー含む16個) | ||
| 電源 | 単3乾電池×1本 | USB-C充電式(180mAh内蔵) | ||
| 公式対応ソフト | CLIP STUDIO PAINT Ver.3.0以降 | 全てのソフト(キーボードモード時) | ||
注目ポイント📌
TABMATE 2は「クリスタの相棒」として機能が特化しているのに対し、8BitDo MicroはPCやiPadから「キーボード」として認識されるため「どのソフトでも使える汎用性」を持っています。自分がクリスタ一本で勝負しているのか、他のソフトも行き来するのかで、最初の選択肢が変わってきます。
約8,000円の差の違いと、予算に応じた選び方

機材を選ぶ際、やはり気になるのはコストです。この2つのデバイスは、価格帯が大きく異なります。
TABMATE 2の公式ストア通常価格は12,800円(税込・送料込)です。すでにクリスタ(EX/PRO)の製品版をお持ちの方なら、優待価格の9,900円で購入できます。
対する8BitDo Microは、ネット通販で約3,690円〜4,800円前後と非常に手頃に購入可能です。
この約8,000円の価格差には理由があります。TABMATE 2の価格には、クリスタに接続するだけで即使える安心感と、後述する「ホイール」という直感的なハードウェア機能が含まれています。
ただし、運用コストの面で知っておくべき耐久性の問題があります。毎日何百回とボタンを押す左手デバイスは、内部のスイッチ類が摩耗しやすく、プロのイラストレーターの多くは数年で買い替える「消耗品」として扱っています。TABMATE 2も前モデルから通信規格は向上しましたが、内部の物理的な耐久性が変わったという発表はなく、ヘビーユーザーの間でも「耐久性は前モデルから変わらず、定期的な買い替えが必要」という認識です。万が一ボタンやホイールがチャタリング(1回押したのに2回判定される誤動作)を起こした際でも、この低価格なら買い直しやすいという運用上の強みが8BitDo Microにはあります。
どちらの製品も、ゲームコントローラーやPC用マウスと同じように「数年で買い替える消耗品」と割り切って使う必要があります。もし、耐久性の高いデバイスを長く愛用したいのであれば、物理的な歯車機構を使用していない「TourBox Elite Plus」のようなハイエンドモデルを検討するのがおすすめです。
| 機種 | デメリット | メリット |
|---|---|---|
| CLIP STUDIO TABMATE 2 | ❌️ 初期費用が高く、消耗品として数年で買い替える際の出費が大きい。 | 🧡 クリップスタジオの複雑な機能にフルアクセスでき、面倒な初期設定が不要。 |
| 8BitDo Micro | ❌️ 導入時にアプリでゼロからキーを割り当てる手間がかかる。 | 💙 約3,690円〜という圧倒的な低価格。故障時の再購入も気軽に行える。 |
注目ポイント📌
快適な操作環境を最優先し、設定の手間を省きたいならTABMATE 2を選ぶのがオススメです。予算を抑えつつ自分でカスタマイズする過程を楽しめたり、故障時の買い替えコストを低く見積もりたいなら8BitDo Microの満足度が高くなります。
ダイヤル有無が作業スピードに与える違い

左手デバイスの操作感において、この2機種の最も大きな違いは「ホイール(ダイヤル)の有無」です。
TABMATE 2には、マウスのスクロールホイールのようなパーツが付いています。これにより、ブラシサイズの拡大・縮小や、キャンバスのズーム・回転を、ダイヤルを回すように直感的に操作できます。 イラスト制作においてブラシサイズの変更は数え切れないほど行うため、このアナログ的な感覚があるだけで作業のテンポが劇的に良くなります。本体形状も手に馴染みやすく、手の中にすっぽりと収まるグリップ感があり、長時間の作業でも腕や指への負担を和らげてくれます。
対して、8BitDo Microにはホイールやジョイスティックはありません。すべてが「押し込むボタン」で構成されています。ブラシサイズを変更する場合は、設定したボタンを「カチカチ」と連打するか、長押しして調整する必要があります。細かい連続的な数値変更では、やはりホイール搭載機に一歩譲ります。
しかし、8BitDo Microは非常に薄く小型なため、手の小さい方でもすべてのボタンに無理なく指が届きます。指先に力を入れずにつまむように持てるため、これはこれで独自の快適さを持っています。
| 機種 | デメリット | メリット |
|---|---|---|
| CLIP STUDIO TABMATE 2 | ❌️ 握る形状が決まっているため、手のサイズによってはボタンが遠く感じる場合がある。 | 🧡ホイール操作により、直感的で素早いブラシサイズ調整やキャンバスの回転が可能。 |
| 8BitDo Micro | ❌️ ホイールがないため、連続的な変更はボタンの連打や長押しになる。 | 💙薄型軽量で、手の小さな人でも全てのボタンに無理なく指が届く。 |
注目ポイント📌
ブラシの太さを頻繁に変えながら描き込む厚塗りや、直感的な感覚を重視する場合は、ホイールのあるTABMATE 2が圧倒的に有利です。逆に、線画メインでブラシサイズをある程度固定して描くことが多い場合は、8BitDo Microでも十分快適に作業できます。
アプリ直結の安心感か、自由なキー割り当てか

設定の自由度とアプリの使い勝手も、作業のストレスを左右する重要なポイントです。ここには、接続に関する注意点が存在します。
TABMATE 2は、設定のすべてをクリスタの画面内で行います。押すたびに複数のツールを順番に切り替える「ツールローテーション機能」も簡単に設定できます。公式サイトの手順にもある通り、重要な注意点があります。OS標準のBluetooth設定画面(WindowsやiPadの設定アプリ)から接続してはいけません。 これをやってしまうと、クリスタ側でTABMATE 2を認識できなくなります。必ず「クリスタのアプリ内」から直接新しいデバイスとして登録・接続を行ってください。また、クリスタのバージョンはVer.3.0.0以降である必要があります。
一方の8BitDo Microは、スマートフォン等の専用アプリ「8BitDo Ultimate Software」を使用して設定を行います。「このボタンを押した時に、キーボードの『Ctrl + Shift + Z』を入力する」というように、キーボードのキー入力を代行させる仕組みです。キーボードのショートカットに対応している操作であれば、基本的にどのソフトでも設定できるため、クリスタに限らず、PhotoshopやIllustrator、動画編集ソフトなどでも全く同じように活用できます。
Procreateのようにアプリ側でショートカットキーの変更ができない場合は、「アプリに元々用意されているショートカット」に合わせてデバイス側を設定する必要がある点には注意してください。(キーボードショートカット:Procreateヘルプ)
ただし、8BitDo MicroをiPadやAndroidで使う際、古いファームウェアのままだと「接続後約1分で切れる」という不具合が出ることがあります。このファームウェアの更新にはPC(WindowsまたはMac)が必須です。PCをお持ちでない方は、一時的に家族のPCを借りるなどの対策が必要になる点には注意してください。
| 機種 | デメリット | メリット |
|---|---|---|
| CLIP STUDIO TABMATE 2 | ❌️ クリスタ以外のペイントソフト(ProcreateやPhotoshopなど)では動作しない。 | 🧡 複雑なマクロやツールローテーションを、クリスタ内の設定画面で迷わず構築できる。 |
| 8BitDo Micro | ❌️ iPad等で不具合が出た際、ファームウェア更新にPC環境が必須になる。 | 💙 Photoshop、動画編集ソフトなど、ショートカットキーがある全ソフトで使い回せる。 |
注目ポイント📌
「クリスタの複雑な機能を迷わず設定したい」ならTABMATE 2が適任です。おまけに、汎用デバイス特有のキー割り当ての煩わしさもありません。「Procreateでも使いたい」「イラスト制作以外のPC操作も効率化したい」など、複数のツールを横断するなら、8BitDo Microの汎用性が活きてきます。
外観と作業環境への影響:消しゴムサイズの軽快さか、立体的な安定感か

作業環境(特にデスクの広さや持ち運びの頻度)への影響も見てみましょう。
TABMATE 2は単3乾電池1本で駆動します。バッテリーの劣化を気にせず長く使えるのは大きなメリットですが、重量は電池込みで約75g(Mサイズの卵約1個強)になります。一般的なマウスよりは十分に軽く、両側にストラップホールも付いているため落下防止の対策もしやすいですが、カバンやガジェットポーチに入れると少しだけふくらみが気になります。
対して8BitDo Microは、重さわずか24.8g、サイズは72×40.7×14.1mmしかありません。これは一般的な消しゴム約1個分の重さとサイズ感です。カフェや旅行先にiPadと一緒に持ち出しても、荷物としての負担は実質ゼロと言えます。クッションを抱えながら、ソファでリラックスした姿勢で作業する際にも、手の中に完全に隠れてしまうほどの小ささです。
どちらもBluetoothによる無線接続のため、自由な姿勢で作業できる点は共通のメリットです。加えて、8BitDo MicroはUSB-Cケーブルでの有線接続にも対応しており、iPadと接続して充電しながら使用することも可能です。
| 機種 | デメリット | メリット |
|---|---|---|
| CLIP STUDIO TABMATE 2 | ❌️ 持ち運ぶ際、ペンケース等に入れると少し立体的なふくらみが気になる。 | 🧡 バッテリー劣化の心配がない乾電池駆動。立体的な形状で握りやすい。 |
| 8BitDo Micro | ❌️ 小さすぎるため、机の上で見失いやすい。 | 💙 24.8gという圧倒的な軽さ。外出先への持ち出しやソファでの作業に最適。 |
注目ポイント📌
iPadなどで「外出先やソファの上でも絵を描きたい」という用途なら、圧倒的な薄さと軽さを誇る8BitDo Microの取り回しの良さが光ります。自宅のデスクで腰を据えて長時間の作業をするなら、TABMATE 2の立体的な握りやすさが疲労を和らげてくれます。
メインの運用か、他の左手デバイスとの併用メリット

モバイル環境での運用や、他のデバイスと組み合わせる場合の実践的な視点もお伝えします。
TABMATE 2は、消費電力が抑えられ、前モデルから自動電源オフまでの時間が緩和されました。無操作で30分経過するまでスリープに入らないため、少し席を外して思考を巡らせても、ボタンを押せばスムーズに作業に復帰できます。クリスタ環境における堂々たる「メイン機」として活躍します。
一方で8BitDo MicroをiPadなどのタブレット端末で運用する場合、少しユーザー側の工夫が必要です。このデバイスを「物理キーボード」として認識するため、文字入力時に画面上のソフトウェアキーボードが出てこなくなるという現象が起こります(ボタンのダブルクリック等で呼び出す回避策があります)。

しかし、8BitDo Microにはそれを補って余りある「最強のサブ機」としての価値があります。例えば、液タブ本体のボタンには「保存」や「取り消し」などの基本操作を割り当て、8BitDo Microには「レイヤーの新規作成」や「左右反転」など、少しマニアックだけれど頻繁に使うショートカットを割り当てる、といった使い分けです。デスクの場所を全く取らないため、既存の環境にプラスワンで追加するのに最適です。
注目ポイント📌
「クリスタ専用の安定したメインデバイス」を探しているなら迷わずTABMATE 2。「メイン環境の隙間を埋める、安くて便利な追加ボタン」を探しているなら8BitDo Microを選ぶと、環境全体の作業効率が底上げされます。
あなたの制作スタイルに最適な左手デバイスはどっち?

ここまで2つのデバイスを比較してきましたが、総まとめとしてそれぞれの評価を表にまとめました。
| 評価軸 | TABMATE 2 | 8BitDo Micro |
|---|---|---|
| クリスタとの相性 | 🧡 完璧(内蔵UIで即設定) | 💙 良好(キー割り当てが必要) |
| 他ソフトでの利用 | ❌️ 不可(クリスタ専用) | 💙 完璧(Procreate等でも可能) |
| 直感的な操作感 | 🧡 ホイールありで快適 | ⚠️ ボタン連打による調整 |
| 導入コスト | ⚠️ 12,800円(優待あり) | 💙 約3,690円〜 |
| 携帯性・取り回し | 🧡 良好(乾電池式で安心) | 💙 最高(消しゴムサイズ) |
- メインの制作ソフトが「CLIP STUDIO PAINT」の人
- ホイールを使って、ブラシサイズやキャンバスを頻繁に微調整する人
- OSのBluetooth設定等の面倒な手順を省き、公式の機能だけで安定して作業したい人
- 手のひら全体でデバイスを包み込むような、安定した握り心地が好きな人
- ProcreateやPhotoshopなど、クリスタ以外のソフトも併用する人
- とにかく安く、手軽に左手デバイスの快適さを試してみたい人
- 外出先やカフェ、ソファの上など、自由な姿勢で作業することが多い人
- 液タブやキーボードの「補助ボタン」として追加導入したい人
左手デバイスは、クリエイターの「時間」を生み出してくれる強力な道具です。ご自身の制作スタイルや予算と相談し、最適な相棒を見つけてみてください。

【免責事項】 本記事で紹介する左手デバイス、関連ソフトウェア(CLIP STUDIO PAINTや各種ペイントアプリ)、およびファームウェア等の情報は、筆者が調査・検証した時点(2026年3月)のものです。製品の価格やハードウェアの仕様、OSのアップデートに伴うBluetooth接続の互換性、アプリ側の仕様変更などは将来的に予告なく変更される可能性があります。また、紹介しているデバイスの操作感や耐久性(消耗部品としての寿命など)については個人の見解を含んでおり、すべての方に同様の動作や体験を保証するものではありません。最終的な購入・導入の判断や、ファームウェア更新などの各種設定につきましては、必ず各メーカー公式サイトの一次情報をご確認の上、ご自身の責任で行っていただきますようお願いいたします。

📚 参考ソース






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